2010.10.02記

邪魔駒を置いて枚数を稼ぐ

今回からは、具体的かつマニアックなテーマを扱っていこうと思います。 煙詰の本質は基本的に捌きにあります。よって、攻めの効率を損なうような駒を配置することによって、邪魔駒消去の手順を挿入できることがよくあります。 邪魔駒消去には、邪魔駒自身が自らを捨て駒として受方に差し出す「自力型邪魔駒消去」と、他の駒を用いて邪魔駒を消去する「他力型邪魔駒消去」ががあります。(この名前もいま適当に付けました。一般的な用語があれば教えて頂ければ幸いです。)特に他力型邪魔駒消去では、この手順を挿入することにより2枚の駒を消費することができるため、非常に効率がよく、また作品の価値も高まることが期待されます。まさに一石二鳥といえるでしょう。 他力型邪魔駒消去の例としては、駒場氏の名作「父帰る」の序があまりにも有名です。(※作品集「ゆめまぼろし百番」の詳細はこちら

駒場和男氏作「父帰る」、詰将棋パラダイス1970年5月号、103手詰
駒場和男氏作「父帰る」、詰将棋パラダイス1970年5月号、103手詰
この作品ではいきなり邪魔駒消去が行われます。すなわち、作意手順は、左図(初形)より▲45と寄△65玉▲55と△同玉(右図)▲66角・・・と進みます。左図からいきなり▲66角と指すと詰まないというのがポイントですね。詳細は省略しますが、ここでは後に▲6五角が打てるようにするために6五の桂馬を消去しています。
図は初形図は4手目△55同玉まで
次に自力型駒消去の例です。
添川公司氏作「早春譜」、近代将棋2003年10月号、139手詰
添川公司氏作「早春譜」、近代将棋2003年10月号、139手詰
では次のふたつの図を見較べてみましょう。
図は100手目△53同玉まで図は104手目△53同玉まで
左図より、作意は▲54歩△52玉▲53歩成△同玉(右図)▲54と・・・続きます。左図でいきなり▲54とと指すと詰まないというわけです。その意味づけですが、ここでは後の変化手順で▲55馬と活用するためにあらかじめ歩を消去しています。 当然のことながら、変化手順を正確に把握していないとこのような逆算はできません。あなたが作者だったとして、右図から左図の逆算が見えるでしょうか?自分にはおそらく見えません・・・。
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