2010.09.30記

利きを増やす

詰方の飛び道具の利きはそのまま玉の軌跡となることがあります。その理由は、飛び道具の利きは遠くまで及んでいて強力であるがために、必然的に攻めの主軸となりやすいからでしょう。攻方の勢力圏に沿って玉が移動してゆくイメージです。
そこで、逆算が膠着状態を迎えつつあるときには、飛び道具を発生させて利きを増やすことが有効であると考えられます。攻方の利きが増えれば、先述の優王手の観点から他の大駒などの逆算がしやすくなるという点を強調しておきます。この技術も、本質はやはり「配置の任意性」にあります。
例を挙げてみます。

添川公司氏作「せせらぎ」、近代将棋1987年3月号、121手詰
添川公司氏作「せせらぎ、近代将棋1987年3月号、121手詰
次のふたつの途中図を見較べてみて下さい。
図は△46手目81同玉まで図は44手目△81玉まで
左図から右図の逆算でやっていることは、8一の角を取るということ、それだけです。しかしながら、8一の角を取る駒(何で取るかについては任意性があります)として利きの多い香車を発生させることによって、利きがグンと増えた印象を受けます。きっとこの王様は、香と詰方の駒に押し上げられてここまで来たのでしょう。
実際に、右図の更に十数手前は以下のような状態でした。
図は30手目△86玉まで
特に添川氏の煙詰には、香車の力を巧みに利用した作品が多いような気がします。
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