おはようございます。2回目をアップします。 今回は、今後の説明が簡単になることを目的として、言葉の定義が多数出てきます。ですので今回はかなり長くなってしまいました。もう少しわかりやすく書ければよいのですが…。なかなかわかりやすく書くのは難しいですね。 この「煙詰創作メモ」、何回くらい書くかは未定なのですが、書き出したら面白くなってきてしまいまして、最低でも5回くらいは書けそうかなという感じです。感想などいただければ励みになりますので宜しくお願いいたします(^o^)
軸となる駒の状態が大切
前回も書きましたように、舞台を移動させるためには大駒の活躍が非常に重要です。特に、軸となるような大駒については、その大駒に関する逆算の可能性に敏感になる必要があります。 簡単のため、今回は様々な用語を定義しておきたいと思います。まず、大駒による王手を次のふたつに分類します。なお今回は開き王手・両王手については考慮しません。- 隣接王手:受方玉の位置に隣接する8マスからの王手
- 覗き王手:隣接王手でない離れた地点からの王手
- 以下を満たす王手を優王手という
- 隣接王手における優王手:王手をかけた駒が存在する地点に対して、玉以外の受方の駒が利いておらず、1枚以上の攻方の駒の利きがある
- 覗き王手における優王手:合駒が可能な地点のうち最も王様に近い地点については前項の条件を満たす。かつ、王手を掛けた駒が存在する地点と合駒が可能な全ての地点について受方の駒が利いていない
- 劣王手・・・優王手でない王手
優王手の例をふたつ示します。
劣王手の例をふたつ示します。
以下では、移動する大駒の現在位置と逆算可能性の関係、および、移動する駒に対する彼我の利きと逆算可能性の関係について考えてみたいと思います。なお、小駒についてもほぼ同様の議論が可能だと思われます。
移動する駒の現在位置
夢中で逆算を進めていると、いつの間にか「このあとどう逆算すればいいのか?」という位置に大駒が移動してしまっていることがあります。例を挙げると、受方玉が一段目にいるときの1一の馬。この大駒を動かさずにその後の逆算が進むのであれば問題はないのですが、そうでない場合は大変です。この角(馬)はどこから来て、なぜわざわざ3三や2二ではなく1一に移動してきたのか?1一に玉方の駒を配して解決できる場合もあり一概には言えませんが、場合によってはその後の逆算が不可能になってしまうケースは少なくありません。逆算可能性の観点からは、軸となるような大駒は、移動しそうにない場所へは配置しないことが重要だといえます。
移動する駒に対する彼我の利き
話が複雑になりそうなのでここでは記号を用います。ある局面を起点として、攻方の大駒 A が 地点 Y から 地点 X に移動してきて隣接王手を掛けその結果受方玉が移動した、という手順を逆算で入れるときのことを考えてみます。逆算においては頻繁にお目に掛かりそうな状況ですね。ここでは次のふたつのケースについて考えてみます。- A が Y から X に移動する王手は劣王手である
- A が Y から X に移動する王手は優王手である
- 受方が王手を掛けた駒を取る、もしくは合駒をすると早詰になる
詰将棋には様々な性質の手が存在します。彼我の利きの有無のみによる分類からは、安易に逆算可能性についての結論を導くことはできないでしょう。しかし、逆算可能性はさておくとしても、劣王手を伴う逆算はその難易度が相対的に高いということは言えるでしょう。
本節では隣接王手に限って議論をしましたが、覗き王手に関してもほぼ同様のことがいえます。
次に b. の場合を考えてみます。 この場合、隣接王手においては逆算がしやすくなることが容易に予想されます。なぜならば、攻方の利きが既にあるところに駒が移動することは極めて自然だからです。覗き王手においても事情はほぼ同様です。特に覗き王手に関しては、王手を掛けた地点にも味方の駒の利きがあれば、後の逆算が容易になる可能性があります。例えば下図において、56にも味方の駒の利きがあれば、56に馬が来たという意味付けがしやすくなるという意味において、後々逆算が容易になる「可能性」があります。
以上、非常に大雑把な議論でしたが、味方の駒の利きが重要であるという考察が得られました。よって、例えば逆算に行き詰ったときに、「配置の任意性の範囲内で変更を加えただけで途端に逆算がしやすくなった」というようなことは十分に有り得る話だといえるでしょう。
なおここで Y の場所も重要であるということを強調しておきたいと思います。何故ならば、更に逆算を続けるのであれば、現在の Y はやがて 将来の X となりうるからです。
しかしながら、一般にはこの Y には非常に大きな任意性が存在します。逆算において大駒の移動元が一意に限定されることは稀だからです。従って、移動可能な地点のどこかからやってきたという風に緩く仮定しておいて、逆算する過程でもっとも逆算がしやすいような地点を探し、それを Y とすればよいでしょう。これは先述した、「配置の任意性の範囲で配置を変更する」ことと同じです。
例を示します。下図の局面を起点として、馬が32に移動してきたという逆算を付け加えたいとしましょう。先程の記号との対応を考えると X=32 です。この図からも、優王手による逆算はいかに自然に付け加えられるかがわかるかと思います。
さて、では移動元を考えてみます。移動元、すなわち Y の候補はたくさんあります。仮に98にしてみましょう(左図)。そしてこの状態から逆算を進めてみて、どうもうまく行かないということであれば、移動元地点を例えば43に変えてみる(右図)。そしてもし43で逆算がうまくいくようであれば、Y=43 として先に進めばよいでしょう。
なおこの図は例として適当に創ったものであって、煙詰の素材にしようとしているわけではありません。しかし、仮にこの図で逆算を進めようとすると行き詰りそうな雰囲気があります。こういうときには配置の任意性を考えてみるといいでしょう。例えば、「24歩→24金などとしてみるのはどうだろうか」などと色々と考えてみるわけです。
※しかしながら24歩→24金とすると初手▲32銀成で余詰となってしまいます。くどいようですが、配置の変更は「余詰が生じない範囲」でしか行うことができません。
これまで味方の利きの重要性について述べてきましたが、当然のことながら、煙詰においては、大駒に利きを与えた駒も当然消さなければなりません。このように言葉で書くと難しそうに感じますが、実際には、頻繁に用いられる部分的なパターンというものが確実に幾つか存在します。これらについては過去の煙詰の作品を鑑賞して覚えていくほかないでしょう。ひとつだけ例を挙げると、桂馬と大駒の組み合わせは非常によく用いられています。桂の利きに大駒を移動して、次にはその桂馬自身を捌いていくような展開です。