短編詳解02

YYZ氏作(詰パラ2001-11 小学校) 「受賞していない作品」という厳しい条件を自分で設けてしまったために 作品選びが難航していましたが、ようやくよい作品を見つけました。
今回紹介するのは、2.76という評価を得ながら惜しくも半期賞を逃したYYZ氏の7手詰です。

図は▲73角成まで 考えられる初手の「数」はたくさんありますが、 有力な「手段」は飛車を動かすか桂を動かすかの2つしかありません。 とりあえず▲41飛成としてみましょう。(41以外の場所に動くと根元の51角を取られてしまいます)。 これに対して△35玉は▲44竜△46玉▲73角成(図)と、うまいこと詰みます。 しかし、△14玉と逃げられると、▲13桂成と迫っても△同玉で詰みません。
どうも、初手に飛車を動かすのはうまくいかないようです。

図は▲13桂成まで 次に桂を動かしてみます。33に移動するのは角道が塞がるため、 △15玉と逃げられて明らかに詰みません。なので、▲13桂成(図)としてみましょう。
応手は△35玉△同玉△33玉△15玉の4通り。 はじめに、△35玉は初手▲41飛成の紛れで検討したのと同様に、 ▲44飛成△46玉▲73角成にて5手で詰みます。 また、△同玉は▲14馬と飛び込んで、△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手で詰みます。

図は△12竜まで 3つ目の△33玉も、▲41飛成の1手詰です。しかし、最後の△15玉は、 以下▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲23成香に△12竜(図)と根元の竜を取られて失敗します。


飛車を動かしても駄目、桂を動かしても駄目。万事休す…でしょうか? いや、残された手段が1つだけあるはずです。ヒントはこれまでに追ってきた紛れ順の中にあります。 次から解決編です。

図は▲13桂不成まで 竜を抜かれないようにする▲13桂不成という妙手がありました。 これで、▲13桂成のときに詰まなかった△15玉は▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲21桂成 (7手駒余り)で詰むようになりました。

図は▲21竜まで 一方(15玉)が詰むようになったとはいえ、 そのために他方(33玉)が詰まなくなっては意味がないので、△33玉の変化を確認しておきましょう。 なお、△同玉と△35玉の変化は桂の成/不成に関わらず同様の手順で詰みます。

生の桂馬は22に利きがないため、▲41飛成に△22玉と逃げられます。 果たしてちゃんと詰むのかどうか、不安になりますが、 よく見ると21に利きがあるではありませんか。 整理すると、初手▲13桂不成に△33玉は、▲41飛成△22玉▲21竜△13玉▲23竜(7手駒余り)で詰みます。

初手に対して△35玉は5手。△15玉は7手駒余り。△33玉も7手駒余り。 そして△同玉は7手駒余らずなので、 作意は「▲13桂不成△同玉▲14馬△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手詰」だとわかりました。

手広い初形に、意味付けを変化に隠した初手の桂不成。 誤解34人・無解4人というのも頷けます。配置が拡がってしまったのが残念ですが、 この手順を支えるには仕方がないところで、2手目△35玉の変化の変化を割り切り、 初手▲57馬の余詰を消している△56歩の配置などはうまいところです。

打歩詰の関係しない桂不成の中では飛びぬけた作品で、 これ以上のものはそうできるものではないでしょう。傑作です。

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