短編詳解02
「受賞していない作品」という厳しい条件を自分で設けてしまったために
作品選びが難航していましたが、ようやくよい作品を見つけました。
今回紹介するのは、2.76という評価を得ながら惜しくも半期賞を逃したYYZ氏の7手詰です。
考えられる初手の「数」はたくさんありますが、
有力な「手段」は飛車を動かすか桂を動かすかの2つしかありません。
とりあえず▲41飛成としてみましょう。(41以外の場所に動くと根元の51角を取られてしまいます)。
これに対して△35玉は▲44竜△46玉▲73角成(図)と、うまいこと詰みます。
しかし、△14玉と逃げられると、▲13桂成と迫っても△同玉で詰みません。
どうも、初手に飛車を動かすのはうまくいかないようです。
次に桂を動かしてみます。33に移動するのは角道が塞がるため、
△15玉と逃げられて明らかに詰みません。なので、▲13桂成(図)としてみましょう。
応手は△35玉△同玉△33玉△15玉の4通り。
はじめに、△35玉は初手▲41飛成の紛れで検討したのと同様に、
▲44飛成△46玉▲73角成にて5手で詰みます。
また、△同玉は▲14馬と飛び込んで、△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手で詰みます。
3つ目の△33玉も、▲41飛成の1手詰です。しかし、最後の△15玉は、
以下▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲23成香に△12竜(図)と根元の竜を取られて失敗します。
飛車を動かしても駄目、桂を動かしても駄目。万事休す…でしょうか?
いや、残された手段が1つだけあるはずです。ヒントはこれまでに追ってきた紛れ順の中にあります。
次から解決編です。
竜を抜かれないようにする
▲13桂不成という妙手がありました。
これで、▲13桂成のときに詰まなかった△15玉は▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲
21桂成
(7手駒余り)で詰むようになりました。
一方(15玉)が詰むようになったとはいえ、
そのために他方(33玉)が詰まなくなっては意味がないので、△33玉の変化を確認しておきましょう。
なお、△同玉と△35玉の変化は桂の成/不成に関わらず同様の手順で詰みます。
生の桂馬は22に利きがないため、▲41飛成に△22玉と逃げられます。
果たしてちゃんと詰むのかどうか、不安になりますが、
よく見ると21に利きがあるではありませんか。
整理すると、初手▲13桂不成に△33玉は、▲41飛成△22玉▲21竜△13玉▲23竜(7手駒余り)で詰みます。
初手に対して△35玉は5手。△15玉は7手駒余り。△33玉も7手駒余り。
そして△同玉は7手駒余らずなので、
作意は「
▲13桂不成△同玉▲14馬△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手詰」だとわかりました。
手広い初形に、意味付けを変化に隠した初手の桂不成。
誤解34人・無解4人というのも頷けます。配置が拡がってしまったのが残念ですが、
この手順を支えるには仕方がないところで、2手目△35玉の変化の変化を割り切り、
初手▲57馬の余詰を消している△56歩の配置などはうまいところです。
打歩詰の関係しない桂不成の中では飛びぬけた作品で、
これ以上のものはそうできるものではないでしょう。傑作です。
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