短編詳解01
2012-02-25 細かい点を修正しました。
初回ということでどの作品にしようか悩みましたが、短編競作展で、
赤羽氏作の不詰によって繰上げ首位になった、小林氏の7手詰を紹介したいと思います。
左下に逃げられては詰みそうにない形なので、
とりあえず53から角を打ってみます。
考えられる応手は△66玉△64合△85玉△74玉の4通り。
順番に調べてみましょう。
まず、△66玉は、▲33馬△57玉▲35角成(図)まで5手でぴったり詰みます。
また、△64歩合は▲同角成△同玉▲65金以下7手駒余りで詰みます。
残るは△74玉と△85玉ですが、△74玉は▲84金以下簡単。△85玉には▲86金△74玉に▲65角成がぴったりで、△63玉▲64角成以下11手で詰みます。
ここで何かがおかしいことに気がつきます。初手▲53角と打つと玉方がどのように応じても詰むようなのですが、2手目△85玉と逃げられると詰めるのに最短で11手を要するのです。
このような状況では、それぞれの変化の応手を再確認することが問題解決の近道です。実は、ここまでの変化の「読み」に1箇所見落としがあるのです。
早詰と即断した2手目△66玉の変化に、
△44歩合という妙防がありました。
▲同角成では76に逃げられてしまうので▲同馬の一手ですが、
そこで△57玉と入られると、▲35馬△66玉▲44馬△57玉…と連続王手の千日手に陥り詰みません。
「詰みすぎ」が一転して「詰まない」状況になってしまいました。
ところで、この△44歩合とはどういう応手なのでしょうか。
△44歩合を省くと53の角が35にきて、5手で詰みました。しかし△44歩合とすることで、
33の馬が邪魔をして53の角が動けなくなってしまいました。
つまり、△44歩合は
2枚の角の利きを重複させる手なのです。
この問題を解決するためには、初手に角を打つ場所をよく考えなければなりません。
いよいよ解決編です。2手目△66玉の変化で、33の香を取った馬は66に利いていましたが、
そこでもう1枚の角を53〜35のラインで動かそうとすると、
前述のように44歩合を食らって失敗しました。
よって、初手はこれを避ける
▲31角!。
これで△66玉の変化は▲33馬△57玉(合駒は無意味)▲13角成で詰むようになりました。
△64歩・△74玉の変化は前述のように詰みますし、
△85玉は、▲86金△74玉▲65馬△同玉▲75角成と7手で詰みます。
(先程11手掛かったのは角が53にいて玉が52に行けたから)
どうやら作意が判明したようです。これにて解決…と云いたいところですが、最後に確認しておかなければならないことがあります。それは2手目
△42歩合(△53歩合)です。
これを▲同角成と取ると、△66玉と逃げられて詰まなくなってしまいます。
しかし、これには▲同馬(図)が好手。2枚馬の威力は絶大で、
どこに逃げても簡単に捕まることを確認して下さい。
こうして、ようやく作意が
▲31角△85玉▲86金△74玉▲65馬△同玉▲75角成だと判りました。
"「利きの重複を狙う合駒」を避ける遠角"という構想もさることながら、
43馬・33香だけで成立している変化処理が素晴らしい傑作でした。
ちなみに当時の評価はA77 B18 C2 誤解20 無解13の平均評点2.83でした。
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